「イベントとしてコーヒーを楽しむ」サザコーヒー鈴木社長インタビュー

2022年に始まった新工場プロジェクトはいよいよ工場のイメージが固まり、着工に向けて準備が進められています。
もとより「オープンイノベーションの場づくり」として始まった新工場プロジェクトでは、筑波大学の研究室をはじめ、様々な専門家と一緒に構想を作ってきました。
このプロジェクトは、そんな構想の段階においても、前回ご紹介した陶芸家の宮下さんなど、新たなメンバーが加わります。
そして今回、「国内外からお迎えするお客様においしいコーヒーを飲んでいただきたい」と思ったことがきっかけで、新工場プロジェクトメンバーの渡先生(筑波大学元准教授)のご縁により、なんと茨城県内のコーヒーブランド、サザコーヒーさんとコラボして当社のオリジナルブレンドを作っていただくことに。

そんなご縁から、サザコーヒーの鈴木太郎社長にも取材をさせていただきました。

サザコーヒーとは
1969年、茨城県ひたちなか市に本店を開業。最高級豆のゲイシャを始め、直接農園から豆を買い付ける高品質さと、徳川家の末裔が焙煎して開発した「将軍珈琲」などのオリジナリティ溢れるラインナップでファンが多い。
2023年にはつくば駅前店の飯髙 亘氏が「日本一おいしいコーヒーをいれる人」を決めるジャパンブリュワーズカップにて優勝し、今年4月にアメリカ、シカゴで行われる世界大会の日本代表に選出。

この日は2月3日、節分の日。サザコーヒー筑波大学アリアンサ店では、コーヒーの豆をまくイベントが始まろうとしているところに、鈴木社長はいらっしゃいました。

ー(イベントではよく無料でふるまわれるというコーヒーを片手に)今日の豆まきで使われるコーヒー、とてもおいしいですね。

鈴木社長 今回は「モカ」と「ケニア」という豆をそれぞれのチームが撒くということで用意しました。私はキリマンジャロの産地であるタンザニアよりももう少し北の、ケニアやエチオピアの豆が好きなんです。ちょうど一昨日までエチオピアにいて、豆の買い付けをしていました。コロナ前は、年に5往復したこともあります。

ー 一年で5往復はすごいですね。

鈴木社長 自分の足で豆を買い付けに行くと、より良いものを手に入れることができます。中には信頼関係がないと売ってくれない農園もあるので、何度も通って顔見知りになる必要があります。とにかくコーヒーが好きなので、自分の好きなことをやっていますね。

2020年からはコーヒーの価値を高めるために、筑波大学大学院生としてコーヒー豆の賞味期限延長の研究をしています。焙煎してからのコーヒーの寿命はだいたい1年ほどで、どんどん劣化が進んでいくと言われていますが、サザコーヒーでは3年まで延ばすことに成功、今後は5年まで延ばしたいと考えています。

ケニアは粒が丸いのが特徴、と解説される鈴木社長

ー豆まきのイベントはどのようにして始まったのでしょうか。

鈴木社長 2018年に堀江貴文さんの節分イベント中に「やばい豆まき」と言う非常にエキサイティングな、密室で豆を本気でぶつけ合う豆まきがありました。それに感銘を受け堀江さんに「コーヒーで豆まきしたいです」と伝え翌2019年からコーヒー豆まきを始めました。

また、2020年にはルーツが全く違う高級コーヒーの”パナマ・ゲイシャ”コーヒーと日本の伝統的な新橋の”芸者衆”が参加するゲイシャの「誤解を深める」イベントを開きました。駐日パナマ全権大使カルロス閣下も参加してくれました。

たとえ美味しいコーヒーを提供していたとしても、その美味しさを知っていただかなければ買っていただけないので、こうしてイベントや試飲会などでコーヒーの美味しさを広めています

そういえば、サードウェーブコーヒーはご存知ですか?

ー聞いたことはあります。

鈴木社長 これまでのコーヒーの歴史をひも解くと、「ファーストウェーブ」はコーヒーの大衆化による大量生産、大量消費の時代でした。なので、大量に物を運ぶ、物流の力を持つプレイヤーが成功を収めました。
そして「セカンドウェーブ」はスターバックスによる「サードプレイス戦略」を代表とする、エスプレッソと喫茶の時代です。
「サードウェーブ」はさらに高品質なコーヒーを求める消費者に対して、オリジナリティのある豆を使用し、丁寧に一杯ずつドリップするコーヒーショップが流行りましたが、結果的には某有名コーヒーショップが世界最大の飲料メーカーに買収されるなど、金融ビジネスの側面もあったように思います。
そしてこれからでてくる「フォースウェーブコーヒー」とは何か。これは、バリスタの技術のデータ化によって、誰でもおいしいコーヒーが飲める時代だと思っています。
私はブリュワーズカップの世界大会で優勝したいと思い、ブリュワーズカップを日本に持ってきたのですが、選手として参加することができず、今年は社員である飯髙さんが当社で2人目として日本一に輝きました。彼はおいしいコーヒーを淹れる確かな実力を持っていますが、一人の選手を育てるにも、原材料を調達するための交通費や、焙煎・抽出の最適解を見つけるための時間と労力など多くのコストがかかります。
そこまで大変なやり方ではなくとも、おいしいコーヒーを再現するための方法は着々とできてきています。

最後に、第5の波とは。私はこれを「イベント」だと推測しています。”メタル”と”アイドル”が融合した「ベビーメタル」という新たなジャンルがブームとなりライブや関連の売上が伸びているように、イベントと合わせることでコーヒーはさらに盛り上がっていくと思います。

ーコーヒーをイベントとして楽しむ、そんな文化ができたら良いですね。鈴木社長、お忙しいところお話を聞かせていただきありがとうございました!

インタビューの後は、コーヒー豆まき(豆合戦)を楽しませていただきました。
このイベントで使われたコーヒー豆は再び焙煎し、筑波大学寮のお風呂にてコーヒー風呂をいれた後、いちご農園に肥料として運ばれ、最後まで活用されるというサスティナブルなイベントでした。

河野製作所では新工場に加えて、カフェを併設したオープンイノベーション拠点を表参道に今春オープンする予定です。
サザコーヒーの名前の由来である「且坐喫茶」(意味:さあここに座してお茶を頂きなさい)という言葉のように、コーヒーを飲みながら新しいアイディアについて語り合える、そんな場にしていきたいと考えています。

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